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広告運用レポートの見方|数字を読む前に「それはいつの数字か」を確認する

筆者: 古田 宏典

「広告運用レポート 見方」で検索すると、記事は出てきます。ただ、そのほとんどはレポートの作り方です。グラフの分け方、テンプレート、自動化ツールの紹介。書き手が広告代理店かレポート作成ツールの提供元なので、当然ではあります。

一方、レポートを受け取る側が知りたいのはそこではありません。「この数字を信じていいのか」「先月と比べて悪くなっているが、本当に悪くなったのか」です。

この記事では、発注側の立場から、レポートの数字を読む前に確認すべきことを整理します。指標の用語解説ではなく、数字そのものの性質の話です。

先月のレポートの数字は、まだ確定していない

最初に共有しておきたい仕様があります。Google広告のコンバージョン数は、コンバージョンが起きた日ではなく、クリックが起きた日に計上されます

Google広告の公式ヘルプにはこう書かれています。

上記のコンバージョンのメインの列は、コンバージョンの日時ではなくクリックの日時に基づいて計算されます。

コンバージョン トラッキング データについて

同じページには、具体例も示されています。

たとえば、広告が先週クリックされて、そのトラフィックがコンバージョンを達成したのが今週の場合、クリックとコンバージョンの両方がコンバージョンのメインの列で先週にさかのぼって表示されます。

つまりこういうことです。7月28日に広告がクリックされ、8月10日に問い合わせが発生した場合、そのコンバージョンは8月ではなく7月28日の実績として記録されます

ここから重要な帰結が出てきます。8月1日に受け取った7月分のレポートと、9月に同じ7月分を出力し直したレポートは、数字が違います。7月末のクリックから後で発生したコンバージョンが、遡って7月に積まれるためです。

これは代理店が数字をいじっているわけではありません。媒体側の仕様です。

「直近ほど成績が悪い」は、ほぼ必ず起きる

この仕様の直接的な影響として、レポートの直近期間は必ず実績より低く見えます。クリックは即座に記録されるのに、そのクリックから生まれるコンバージョンはまだ発生していないためです。

Google広告のヘルプも、この見え方について明示的に注意を促しています。

Google 広告では、クエリ日別にコンバージョンが記録されるため、常に最新のコンバージョン数が表示されるわけではありません。このため、CPA が増加したり、ROAS が減少したりしているように見えることがあります。

コンバージョン達成までの期間レポートについて

(引用中の「クエリ日」は、ユーザーが検索して広告をクリックした日を指します。)

実務上の意味は明確です。

  • 月初に受け取った前月のレポートで「今月はCPAが悪化した」と書かれていても、それは確定した悪化ではない
  • 検討期間が長い商材ほど、この効果は大きくなる(BtoBや高額商材では数週間〜数ヶ月の差が出ます)
  • 短期の週次比較で一喜一憂するのは、この仕様上あまり意味がない

逆に言えば、レポートに「直近のコンバージョンは今後増える見込みです」という注記があるかどうかは、書き手がこの仕様を理解しているかの判別材料になります。

「コンバージョン」と「すべてのコンバージョン」は別の数字

もうひとつ、レポート上で取り違えが起きやすいのが、コンバージョンの列が2種類あることです。

Google広告のヘルプによれば、両者の関係はこうです。

[すべてのコンバージョン] には [コンバージョン] 列のデータに加え、[コンバージョン] 列に含めていないコンバージョン アクション、実店舗への来店、電話での問い合わせなどのデータも含まれます。

[すべてのコンバージョン]について

含まれるもの 入札への影響
コンバージョン 「メインアクション」に設定したものだけ 自動入札の最適化に使われる
すべてのコンバージョン 上記+メインに含めていないアクション、来店、電話など 参照値。直接は使われない

差が効いてくるのは次の2点です。

1. 数字が大きく見える

「すべてのコンバージョン」を使えば件数は増え、CPAは下がります。資料映えする数字です。どちらの列でレポートが作られているかは確認する価値があります。

2. 入札の最適化対象が変わる

自動入札が学習するのは「コンバージョン」列、つまりメインアクションに設定したものだけです。ここに何を入れるかは、成果の定義そのものです。言い換えれば、KPIの設計が広告の管理画面に現れている状態で、指標の決め方そのものはマーケティングKPIの基本で扱っています。

たとえば、資料ダウンロードと問い合わせの両方を計測していて、資料ダウンロードだけがメインアクションになっていれば、機械学習は資料ダウンロードを増やす方向に最適化します。問い合わせが増えなくても、レポート上のコンバージョン数は伸びます。

レポートの数字が伸びているのに商談が増えない、という状況の背景にはこの設定があることが少なくありません。確認すべきは運用の巧拙ではなく、何がメインアクションに設定されているかです。

計測期間が何日に設定されているか

コンバージョンをクリックから何日後まで数えるか(計測期間)も、件数を左右します。公式ヘルプによれば、初期値と設定範囲は次のとおりです。

種類 デフォルトの計測期間
クリックスルー コンバージョン 30日
エンゲージ ビュー コンバージョン 3日
ビュースルー コンバージョン 1日

計測期間は、コンバージョンの発生元に応じて、1~90 日の間で自由に設定できます。

計測期間について

30日と90日では、当然ながら計上される件数が変わります。検討に時間のかかる商材で30日のままなら、実際には広告経由なのに計上されないコンバージョンが出ます。

なお同ヘルプは、計測期間を変更しても変更前のクリックには遡って適用されないとしています。設定を延ばした前後で数字が不連続になる点も、比較のときには意識が要ります。

レポートを受け取ったら確認する4つのこと

以上を踏まえると、指標の中身を読み込む前に確認すべきなのは次の4点です。

  1. このレポートはいつ出力されたものか — 対象期間の終了直後なら、直近のコンバージョンはまだ乗っていません
  2. どちらのコンバージョン列を使っているか — 「コンバージョン」か「すべてのコンバージョン」か
  3. メインアクションに何が設定されているか — 自動入札が増やそうとしているのは、本当に増やしたい成果か
  4. 計測期間は何日か — 商材の検討期間と釣り合っているか

いずれも代理店に聞けば即答できる内容です。答えが曖昧だったり、質問の意図が通じなかったりする場合は、レポートが管理画面からの機械的な転記になっている可能性があります。

なお、手数料の範囲にレポート作成が含まれるかは会社によって異なり、別建てで請求されることもあります。この点はリスティング広告の手数料「20%」は何に対する20%かで整理しました。

数字が読めても、判断は別

ここまでは「数字を正しく読む」ための話です。ただ、正しく読めたところで次の判断が自動的に決まるわけではありません。

数字が読めるようになると、多くの場合こう考えます。「この代理店は説明が不十分だから替えよう」。ただ、乗り換えには失うものがあり、そもそも代理店の問題ではないケースもあります。

判断を分けるのは、たいてい次の点です。

まとめ

広告運用レポートで最初に確認すべきは、個別の指標ではなく数字の性質です。

Google広告のコンバージョンはクリック日に遡って計上されるため、直近期間は必ず低く出ます。月初に受け取った前月レポートの数字は、後から増えます。この一点を知っているだけで、「先月より悪化した」という記述を鵜呑みにせずに済みます。

そのうえで、どのコンバージョン列か、メインアクションは何か、計測期間は何日か。この3点を確認すれば、レポートは「渡されるもの」から「検算できるもの」に変わります。

同じことがサイト側の計測にも当てはまります。GA4は設定次第で同じ行動を1件とも5件とも数えるため、CVRを改善する前に何を数えているかの確認が要ります。詳しくはコンバージョン改善の前に確認することにまとめました。


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