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広告運用

リスティング広告を代理店へ依頼する前に準備するもの|初回相談で伝える10項目

筆者: 古田 宏典

リスティング広告の代理店へ相談するとき、完成した広告文やキーワード一覧まで用意する必要はありません。それらを考えることも、運用代行に含まれる仕事だからです。

一方で、商品を売る理由、優先したい顧客、問い合わせ1件に払える金額は、代理店だけでは決められません。ここが曖昧なまま見積もりを依頼すると、各社が異なる前提で提案するため、金額も内容も比較しにくくなります。

この記事では、リスティング広告を依頼する前に準備したい情報を10項目に整理します。すべてに答えを出すことが目的ではありません。決まっていること、仮説、まだ分からないことを分けて伝えられる状態を目指します。

まず準備するもの一覧

初回相談までに、次の内容をA4用紙1枚程度にまとめます。

項目 伝える内容 決まっていない場合
1. 広告の目的 売上、商談、問い合わせなど 事業上の課題を伝える
2. 対象商品 広告で優先する商品・サービス 候補と優先順位を伝える
3. 優先顧客 誰からの相談を増やしたいか 既存の良い顧客を例にする
4. コンバージョン 購入、問い合わせ、電話など 最終成果と中間行動を分ける
5. 採算 粗利、受注率、許容獲得単価 分かる範囲の営業数値を出す
6. 予算 広告費と運用費の月額上限 試せる総額と期間を伝える
7. 過去実績 広告費、CV、CPA、受注数 未実施ならその旨を伝える
8. LP・サイト 広告のリンク先と改修可否 既存ページを共有する
9. アカウント Google広告、GA4などの有無 誰が管理しているか確認する
10. 体制と日程 承認者、素材担当、開始希望日 意思決定に必要な日数を伝える

商品資料、料金表、過去のレポートがあれば添付します。ただし、資料を大量に送るだけでは要点が伝わりません。上の10項目を先頭に置き、その根拠として既存資料を添える方が、初回相談を進めやすくなります。

1. 広告を出す目的

「問い合わせを増やしたい」だけでなく、その先で事業をどう変えたいかを伝えます。

  • 新規顧客からの商談を月5件増やしたい
  • 特定商品の売上を伸ばしたい
  • 営業担当者の空き枠を埋めたい
  • 繁忙期の前に予約を確保したい
  • 新しい商圏で需要を確かめたい

同じ問い合わせ獲得でも、目的によって配信地域、予算、評価期間が変わります。例えば営業の空き枠を埋める施策なら、問い合わせ件数だけでなく、対応できる件数と時期も設計条件になります。

売上目標まで決まっていなくても構いません。「紹介以外の新規獲得経路がない」のように、広告を検討した背景を共有してください。

2. 広告で優先する商品・サービス

会社で扱うものをすべて並べるのではなく、最初に広告費を使いたい商品を絞ります。

優先順位を決める材料は、次の4つです。

  • 売上や粗利を伸ばしたいか
  • 検索する人に説明しやすいか
  • 問い合わせ後に対応できるか
  • 競合と比較されたときの違いがあるか

広告は、需要のある検索へすぐに接点を作れる一方、複数の商品へ少額ずつ配ると判断に必要なデータが分散します。候補が複数ある場合は「第一候補」「余力があれば試すもの」に分けて伝えます。

3. 増やしたい顧客

年齢や性別だけでなく、どのような状況で、何を理由に自社を選ぶ顧客なのかを整理します。

例えば法人向けサービスなら、次の情報が役立ちます。

  • 業種と企業規模
  • 対象地域
  • 相談者の部署や役職
  • 相談が発生するきっかけ
  • 比較時に重視される条件
  • 受注しやすい顧客と、受注しにくい顧客

ペルソナ資料を新しく作る必要はありません。最近受注した顧客を2〜3社挙げ、「なぜ相談され、なぜ受注できたか」を説明できれば、キーワードや広告文を考える材料になります。

同時に、対象外の条件も伝えます。「個人からの依頼には対応しない」「この地域は訪問できない」「最低発注額に満たない案件は受けられない」といった条件は、無駄なクリックと問い合わせを減らすために重要です。

4. 何をコンバージョンとして数えるか

広告の成果として数える行動を決めます。Google広告では、購入、フォーム送信、電話、アプリの利用など、複数のコンバージョンを個別に計測できます(Google広告ヘルプ)。

すべての行動を同じ価値として扱わず、主要な成果と補助的な行動を分けます。

区分
主要コンバージョン 購入、問い合わせ完了、予約完了、電話相談
補助コンバージョン 資料ダウンロード、料金ページ閲覧、フォーム到達
広告の最終評価 商談化、受注、売上、粗利

フォーム送信だけを見ていると、営業対象外の問い合わせが増えても広告成果が良く見えます。相談後の商談化や受注まで確認できるよう、問い合わせデータに流入元を残せるかも確認します。

5. 1件獲得するために払える金額

目標CPAを先に決められない場合は、無理に相場を当てはめません。まず、次の数値を分かる範囲で用意します。

  • 1件受注したときの売上と粗利
  • 問い合わせから商談になる割合
  • 商談から受注になる割合
  • 継続購入や解約を含めた顧客価値
  • 広告以外にかかる営業・制作コスト

例えば、1件の受注に広告費として使える上限が10万円で、問い合わせから受注する割合が10%なら、問い合わせCPAの上限は単純計算で1万円です。

受注1件に使える広告費 100,000円 × 受注率 10% = 問い合わせ1件 10,000円

これは広告媒体へ投じる金額の目安であり、目標値を決めるための出発点です。代理店の手数料、LP制作費、営業コストを同じ10万円に含める場合は、その分を先に差し引く必要があります。問い合わせの質や継続率によっても採算は変わります。数字が取れていない場合は「受注率は不明」と伝え、広告開始後に営業結果まで記録する計画を代理店と決めます。

6. 月に使える予算と試せる期間

予算は、媒体へ支払う広告費と代理店へ支払う費用を分けて伝えます。

月額の総予算: 500,000円
広告費: 400,000円
運用代行費: 80,000円
その他: 20,000円(計測・制作など)

「月50万円」とだけ伝えると、50万円すべてを広告費と解釈する会社と、手数料込みと解釈する会社が出てきます。見積もりを比較するためにも、総支払額と実際の広告費を分けます。費用の読み方は、リスティング広告の手数料「20%」は何に対する20%かで詳しく解説しています。

Google広告はキャンペーンごとに平均日予算を設定します。多くのキャンペーンでは、月の請求上限は平均日予算の30.4倍ですが、需要が多い日は平均日予算の最大2倍まで配信される場合があります(Google広告ヘルプ)。社内では月額だけでなく、誰が予算変更を承認するかも決めておきます。

また、最初の1か月ですべてを判断する前提にせず、「3か月で総額いくらまで試せるか」のように検証期間を含めて伝えます。少額で外注するか迷う場合は、広告運用を自社で行う場合の見えにくいコストも判断材料になります。

7. 過去の広告実績

過去に広告を配信したことがあれば、直近のレポートだけでなく、比較できる形で共有します。

  • 配信期間と広告費
  • 媒体、キャンペーン、商品別の実績
  • 表示回数、クリック数、コンバージョン数、CPA
  • コンバージョンの定義
  • 問い合わせ後の商談数と受注数
  • 実施した変更と、その時期
  • 成果が良かった・悪かったという社内の認識

管理画面を直接共有できない段階では、CSVやスクリーンショットでも構いません。ただし、集計期間とコンバージョンの定義を添えます。定義が違うCPAをそのまま比較すると、引き継ぎ後の目標を誤ります。

広告未実施なら、Webサイトの問い合わせ件数、自然検索や紹介からの受注率、繁忙期など、既存の営業データを共有します。「実績なし」は欠点ではなく、初回配信を検証として設計するための前提です。

8. 広告のリンク先と改修できる範囲

広告からどのページへ誘導するか、既存ページを修正できるかを確認します。

  • 商品・サービスの説明ページはあるか
  • 料金、事例、選ばれる理由が掲載されているか
  • スマートフォンで読みやすいか
  • フォームや電話への導線があるか
  • 計測タグを設置できるか
  • 誰が文章やデザインを修正するか
  • 修正には何日かかるか

LPが完成していなくても相談はできます。ただし、代理店の契約にLP制作やサイト改修が含まれるとは限りません。運用代行で任せられる業務を確認し、広告文の改善とリンク先の改善を誰が担当するか分けてください。

9. 広告・計測アカウントの有無と権限

すでに利用しているものを一覧にします。

  • Google広告
  • Googleアナリティクス(GA4)
  • Googleタグマネージャー
  • Google Search Console
  • Microsoft広告、Yahoo!広告など他媒体
  • CMS、フォーム、CRM

IDやパスワードをメールで送るのではなく、各サービスの権限機能を使って招待します。Google広告では、閲覧のみ、標準、管理者などのアクセス権限を付与でき、後から変更・削除できます(Google広告ヘルプ)。

代理店に新規作成を依頼する場合も、自社の担当者が確認できる状態にします。契約終了後に履歴や計測環境を残す考え方は、広告運用を外注しても自社に残すべきもので整理しています。

10. 社内体制と開始希望日

広告は、代理店だけで開始できません。次の担当者と所要日数を確認します。

  • 提案や予算を承認する人
  • 商品情報を確認する人
  • 広告文を審査する人
  • サイトを修正する人
  • 問い合わせ後の結果を記録する人
  • 請求・支払いを担当する人

広告文やLPの確認に法務・業界審査が必要なら、最初に伝えます。「来月から始めたい」だけでなく、承認に1週間かかる、素材を用意できるのは何日、といった制約があると現実的な進行表を作れます。

自社で決めること、代理店と決めること、配信後に決めること

準備段階ですべてを確定させる必要はありません。判断する時期を分けます。

自社が相談前に用意する 代理店と相談して決める 配信後のデータで決める
事業上の目的 媒体とキャンペーン構成 キーワードの追加・停止
優先商品と顧客 キーワードの初期案 広告文の勝ち負け
主要コンバージョン 広告文とリンク先 予算配分の変更
予算上限と承認者 計測方法 実績CPAの妥当性
過去実績と制約 初期目標と評価期間 問い合わせの質

代理店は広告の専門家ですが、自社の経営判断を代行する存在ではありません。一方、広告主がキーワードや入札方法まで決めてから依頼すると、代理店の知見を活かせません。事業の条件を自社が出し、その条件を広告設計へ変換する作業を依頼する、という役割分担が適切です。

初回相談メモのテンプレート

次の枠をコピーし、分からない項目は「未定」「不明」と書いて使ってください。

【広告を検討した背景・目的】

【優先して広告する商品・サービス】

【増やしたい顧客】
地域:
顧客の特徴:
対象外にしたい条件:

【成果として数えたい行動】
主要コンバージョン:
補助コンバージョン:
最終的に確認したい成果:

【分かっている採算】
平均売上・粗利:
問い合わせからの商談率:
問い合わせ・商談からの受注率:
1件獲得に使える上限:

【予算と期間】
月額の総予算:
うち広告費:
試せる期間:

【過去の広告】
実施の有無:
分かっている実績:

【リンク先・計測環境】
候補URL:
Google広告:
GA4・タグマネージャー:
サイト改修の可否:

【体制と日程】
社内承認者:
実務担当者:
開始希望日:

このメモを複数の代理店に共通して渡せば、同じ条件で提案を比較できます。代理店ごとに前提がずれた見積もりを受け取るより、支援範囲、考え方、費用の差が見えやすくなります。

提案を受け取った後は、リスティング広告代理店の選び方に掲載した12の質問と採点表を使って比較できます。

相談前に揃わなくてもよいもの

次のものは、相談前に完成させなくても構いません。

  • 網羅的なキーワード一覧
  • 完成した広告文
  • 詳細なキャンペーン設計
  • 確定した目標CPA
  • 専用LP
  • 完璧なコンバージョン計測

これらは、事業条件と現状を確認した上で設計する項目です。ただし「誰が、見積もりのどの範囲で準備するか」は契約前に確認してください。

まとめ

リスティング広告を代理店へ依頼する前に必要なのは、広告設定の完成品ではありません。目的、優先商品、顧客、コンバージョン、採算、予算、過去実績、リンク先、アカウント、社内体制の10項目を整理した相談メモです。

すべて分かっていなくても、未確定の項目が見えていれば相談できます。反対に、前提を共有せず「月30万円で成果を出してほしい」と依頼すると、提案の良し悪しを判断できません。

Owtellでは、広告を配信する前の目標整理、計測設計、サイトの確認から支援しています。広告運用・改善サービスをご覧いただくか、準備途中の段階でもお問い合わせからご相談ください。

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