「CVR改善」で検索すると、施策の一覧が出てきます。フォーム項目を減らす、CTAを目立たせる、チャットボットを置く、導入事例を増やす。どれも間違いではありません。
ただ、施策を打つ前に確認しておくことがあります。いま見ているコンバージョン数が、何を数えた数字なのかです。ここがずれていると、改善したのに数字が動かない、あるいは何もしていないのに数字が動く、ということが起きます。
この記事では、施策の前に確認すべき点と、実際に問い合わせを2.4倍にしたときの手順を整理します。
同じ行動が、1件にも5件にもなる
GA4では、成果として計測する行動を「キーイベント」と呼びます。Google の定義はこうです。
キーイベントとは、ビジネスの成果にとって特に重要なアクションを測定するイベント
問題はこの先です。キーイベントにはカウント方法の設定があり、2つから選べます。
| カウント方法 | Google の説明 |
|---|---|
| イベントごとに1回(推奨) | キーイベントがトリガーされるたびにカウントされます |
| セッションごとに1回(従来版) | 特定のセッション内で、キーイベントが1回のみカウントされます |
出典はキーイベントのカウント方法を変更するです。同ページには具体例も示されていて、1セッション内でキーイベントが5回トリガーされた場合、前者では5件、後者では1件になります。
問い合わせフォームの送信で言えば、同じ人が1回の訪問で2回送信したとき、2件と数えるか1件と数えるかの違いです。CVRの分子が変わるので、当然パーセンテージも変わります。
既定値が揃っていないことがある
さらに厄介なのが初期値です。同じヘルプにはこう書かれています。
ユニバーサルアナリティクスの目標から作成されたキーイベントは、デフォルトで「セッションごとに1回」が適用されます。それ以外は「イベントごとに1回」がデフォルトです。
つまり、UAから引き継いだ計測と、GA4で新しく作った計測が同じプロパティに混在していると、数え方が揃っていない可能性があります。「資料請求は5件、問い合わせは3件」と並べても、その2つが同じルールで数えられているとは限らないということです。
複数のコンバージョン地点を横並びで比較する前に、各キーイベントのカウント方法を確認しておく価値があります。
設定を直しても、過去の数字は直らない
カウント方法を揃えようとしたときに、もう1つ知っておくべき仕様があります。
カウント方法の変更は、変更後に発生したキーイベントにのみ適用され、キーイベントの過去のデータには適用されません。
設定を直した前後で、データが不連続になるということです。「先月と比べて」の比較が成立しなくなるので、いつ設定を変えたかを記録しておかないと、後から数字の変化を施策の成果と取り違えます。
これは広告のレポートで起きる問題と同じ構造です。Google広告のコンバージョンはクリック日に遡って計上されるため、直近期間は必ず低く出ます。詳しくは広告運用レポートの見方にまとめました。数字を読む前に、その数字がどう作られているかを確認するという点は共通です。
分母も1つではない
分子の話をしましたが、分母も確認が要ります。GA4にはコンバージョン率にあたる指標が、セッション単位とユーザー単位の両方で用意されています。
- セッション単位 — 訪問のうち何%でコンバージョンが起きたか
- ユーザー単位 — 人のうち何%がコンバージョンしたか
検討期間が長い商材ほど、1人が何度も訪問してから問い合わせます。その場合、セッション単位の数字はユーザー単位より低く出ます。どちらが正しいということはありませんが、社内で共有する数字がどちらなのかは揃えておかないと、話が噛み合いません。
「CVRが1%を切っている」という報告を受けたときに最初に確認するのは、施策ではなく分母です。
施策の前に、どこで落ちているかを特定する
計測が信用できる状態になってから、ようやく改善の話になります。
ここでも順番があります。施策リストを上から試すのではなく、どこで落ちているかを先に特定します。訪問から問い合わせまでの間には、ページに来る、内容を読む、フォームに進む、送信する、という段階があり、詰まっている場所によって打ち手が変わるためです。
- ページを見てすぐ離脱している — 訴求が来訪者の期待と合っていません。流入元とページ冒頭の内容がずれている可能性があります
- 読まれているがフォームに進まない — 判断材料が足りていません。料金、事例、導入までの流れなど、意思決定に必要な情報を探しています
- フォームに来て送信されない — 入力の負荷か、心理的なハードルです。項目数、必須の範囲、送信後に何が起きるかの説明を見ます
どの段階で落ちているかは、アクセス解析で経路を追えば分かります。ここを飛ばして施策を並べると、詰まっていない箇所を改善することになります。
実際にやったこと
私たちが関わったBtoB SaaSの事例では、広告費を使わずサイト改善のみで、月間の問い合わせ数を8.5件から約20件(約2.4倍)に増やしました。期間は約5ヶ月です。
手順はこうでした。
- アクセス解析で離脱している箇所を特定する — どのページで、どの段階で落ちているかを先に確定させる
- 訴求内容を絞り込む — 誰に向けた何のサービスかを1つに絞る。あれもこれも書くと、誰にも刺さらなくなります
- 導線を整理する — 読んだ人が次に進む場所を明確にする
- CTAを見直す — 押す理由と、押した後に何が起きるかを書く
特別なことはしていません。新しい施策を足したのではなく、落ちている場所を1つずつ潰しただけです。サイトも作り直していません。
流入が足りないなら、CVR改善では届かない
最後に前提の確認です。CVR改善が効くのは、すでに流入がある場合に限られます。
月に数百セッションしかないサイトでCVRを1%から2%に上げても、問い合わせは数件が十数件になるだけです。改善の余地がないわけではありませんが、事業のインパクトとしては小さい。この状態で必要なのは改善ではなく集客です。
自社がどちらの状態にあるかの切り分けは、ホームページは作り直すべきか、改善で足りるかに整理しました。
また、そもそも何を成果として数えるかの設計は、KPIの話でもあります。指標の決め方はマーケティングKPIの基本で扱っています。
まとめ
コンバージョン改善は、施策の引き出しの多さでは決まりません。
- 分子を確認する — キーイベントのカウント方法が「イベントごと」か「セッションごと」か。UAから引き継いだものと新規のもので既定値が違う
- 設定変更は遡らない — 直した前後でデータが不連続になる。変更日を記録しておく
- 分母を揃える — セッション単位かユーザー単位か。社内で数字の定義を合わせる
- 落ちている段階を特定してから施策を選ぶ — 詰まっていない箇所を改善しても数字は動かない
- 流入がないならCVR改善では届かない — その場合は集客の設計が先
施策の一覧は探せばいくらでも出てきます。効くかどうかを決めるのは、自社がどの段階で落ちているかを特定できているかです。
アクセス解析を一緒に見て、どこで落ちているかを特定するところからご相談いただけます。計測が正しく入っているかの確認からでも構いません。名古屋・愛知の広告代理店選びでは広告側の費用相場も公開しています。初回相談は無料です。お問い合わせはこちら
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